PC解体新書編


 パソコンを作るのが大好きだ。
 けど、自分に必要なPCなんてせいぜい1、2台。だから家のPCも全部自分が作った。
 それでも足りずに友人の分まで作ろうとするのだが… これがよくない。
 以前はよくやったものだが最近は友には組まないと決めている。
 理由は簡単で、誰にもなんの利益もないからだ。

 手間賃をもらうつもりなどもろちろんないし余ってる部品があればサービスのつもりでつけてやる。
 多少自腹をきっても組むのが楽しいからそれでいい。
 けれど時間と金を費やして作ったのだからと、つい「感謝してほしい」という気持ちになってしまう。
 そしてそれは作る側の理屈でしかない。

 作ってもらう側からすれば、市販PC並の金を払わされ、制作者好みのクセのあるマシンを渡されて、ソフトのインストールもCD1枚でOKというわけにいかない。
 そして必ずといっていいほど出るトラブルに最初は機嫌よく答えてくれる友人も段々面倒になり、しまいには友人関係そのものもギクシャクしかねない。


 という具合で本当に何もいいことがないので基本的に友人に組むのはやめた。
 ただし例外はある。タダで組んで人にあげる場合だ。
 人間不思議とタダならサポートを期待せず自分でなんとかしようという気になる(この気持ちがないとどんなマシンも宝の持ち腐れだ)。
 組む方は丸損だが余ったパーツなどしまっておいてもなんの値打ちもないし、捨てるとなると最近は金まで取られる。あながち悪い話ではない。

 というわけで今回、私の作る型落ちマシンでもいいから欲しいという奇特な人のため一台組んでみた。
 家捜しするといろいろでてきた。捨てるには忍びなく、といって常用する気にもなれない微妙なパーツが続々と。

CPU Athlon64 3700+ AMD黄金時代(=インテル不遇の時代)に憧れて買ったCPU。
今となっては使い回しのきかないSocket939。
諸事情からほとんどメインマシンとして使うことはなかった。
問題はCPUそのものではなくマザボにあったのだが…
M/B ASUS A8V-MX CPUに合わせて買ったマザボ。
購入時には吟味を重ねたつもりだが、いざ使ってみるとTV録画に問題が多発、
結局メインマシンとして使うのを断念した。
時代はSocket939からAM2に移り、完全に過去のパーツに。
MEMORY PC3200/256MB * 1
PC2700/512MB * 1
Athlon64ならメモリはデュアルチャネルが常識だが、
メモリが安くなるのを待ってるうちに買い時を失ったまま時代はDDR2に移り、現在に至る。
メインマシンでもないマザボにいまさら割高なDDRメモリを買う気もおきないし。
HDD Barracuda7(IDE)160GB
Barracuda9(SATA)160GB
手頃なストックが複数あり、どれをつけるか思案中。
性能を考えればSATAだがSATAの肝であるNCQを有効にするのは初心者には困難極まる。
ユーザーによる再インストールも考えると旧型のIDEで十分と思える。
VGA RADEON9200 マザボに差さるグラボはAGPのみだが手持ちにロクなのがない(G400とか)。
いっそオンボードのがマシにも思えるが、将来を考えるとDVI端子のついたこのVGAがベストと思える。
電源 ZUMAX ZU-360B 電源のストックは山ほどあるがいずれもPen3時代の代物。
Athlon64対応の唯一のストックがこれ。3000円の安物電源だが、使い物になるだろうか。

思いのほか短命だったSocket939。
悪いヤツじゃないんだけどねえ。

RADEON9200。妥協の産物のようなVGA。
自分ならこんなの買いませんが、あるものは使え。

いまどきの安物電源の性能を
確かめる意味でも買ってみたこの電源。
吉と出るか否か。

 手持ちの部品だけでは足りないので、さらに部品を調達してきた。

 ・ケース … 友人の余りものをもらってきた。
 ・DVD … 日本橋で購入(Pionneer DVR-115)。CD-ROMドライブのストックはあるけど今時そんなのつけても嫌がらせとしか思えないし。
 ・メモリ … 256MBの片面実装が500円だったのでダメモトでデュアルチャネルを目指そうと思いつきで購入。


 さあ、具材は揃った。久々に、調理といきますか。

まずは、旧マシンの解体

 友人からひきとったケースの中身をとっぱらい、リニューアル。

友人のマシンといっても元々は私が使っていたもの。
初めての自作の時に買ったケースなので懐かしさがこみあげる。
あの時のマザボはI Will社のXA100だった。もちろんCPUはK6-2だ。
そういえばI Willって最近聞かないなあ…

さて、出てきたマザボはさすがにXA100ではない。
それよりは最近のものだ。少しだけ。
中のマザボが出てきました!

「AOpen AX6BC ProU」
(通称「Type-R VSpecU」)

懐かしさとネーミングの恥ずかしさに涙が出てきそうだ。
差さってるパーツも時代を感じるものばかり。

メモリを積みまくってるように見えるけど 実は16MB
「ATI All-in Wonder128」

RADEONブランド以前のATIグラボなんて久しぶり。
しかもPCI接続。
このマザボにはAGPが差さるはずなのに、なぜ?
…「モデム」って知ってます?
知りませんよね。
知らなくていいです21世紀の君たちは。
続いてはサウンドカード。
あまり見覚えのないカードだがAOpen製かな?

右下に延びるケーブルは、
サウンドカードとCD-ROMドライブをつなぐアナログケーブル。
時代を感じます。

チップはヤマハ製ですね。
これで初音ミクを鳴らしてみたい気もします。

それにしてもなんでこんな安物サウンドカードをわざわざ差してるのか…
と思ったらこのマザボ、オンボードサウンドついてないんですね。
 
というわけで当然のようにLANもオンボードではありません。
みんなの友だちカニチップ。

このマザボのFDDコネクタの位置は何度見ても不可解
マザボ本体。でかいなあATXって。
私は最近はMicro-ATXしか使いません。

差さってるCPUは… たぶんPen3(1.1GHzくらい)。
メモリは… 今さら調べる気にもなりません。

VGA、LAN、サウンドといったオンボード機能は一切なし。
ATXはそれでいいと思います。
逆にノイズ源が少ないので音楽専用PCを組むのにいいかも。


このケースはマザボを中板に取り付けます。
その中板をマザボに取り付けるようになってます。全てが大げさです。
鉄板も分厚く質実剛健。
昔のPCのほうがよかったなんて口が裂けても言いませんが、
ケースは昔のほうがいいと思う。


 さあ、ケース内からはまだ続々とゴミ(お宝)が出てきます。

HDD(40GB)。

全く見覚えがありません。
ウェスタンのHDDなんて買った記憶ないし。
特にウェスタンがキライというわけではありません。機会がなかっただけです。
今売ってる省電力HDD(Caviar GP)は非常に興味あります。

まあHDDなんてみんな同じといえば同じですけどね(富士通以外は)。
それより真空管とかいじるようになってから
ウェスタンの事を「ウェスターン」と言いそうになって困ってます。
DVDドライブ「Pioneer DVR-109」。

これは最近友人が増設したものです。
どうやら友人はこのマシンでエンコードとかしてたらしい
(Pen3でエンコ!)
そんな友も今はE8400と4GBのメモリを積んだ今どきのマシンで
エンコ生活をエンジョイしています。

唯一まともなパーツなのでこれは返却しないと。
最後に出てきたのは電源。

型番とかよくわかりません。というかこの電源も見覚えがないのだけど。
ケース付属の電源がお亡くなりになって以来、淡々と働いてくれてました。

今までトラブルもなかったのは良馬の証。おつかれさまでした。
ようやくガランドウになったケースを掃除。

昔は静音にこだわって吸音材やら鉛シートやら張りまくってました。
そういうのはこの際全て撤去。
今はパーツそのものが静かになりましたから。

10年ものとは思えないほど綺麗な内部。
喫煙者のマシンとの違いは明白です。
ケースを開けるたび
「煙草なんて吸うもんじゃない」
という思いを強くします。


とりあえず「ゴキブリの卵」とか出てこなくてよかった。さあ破壊は終わった。次は創造の番だ。


 そして組み立て

 はい、あっけなく組み立て終わり。


 (最近はなんか組むよりバラすほうが楽しくて)


旧(上)は鉄板1枚。新(下)はアルミ薄板。
新旧のマザボのバックパネルを並べてみました。
こうしてみるとPCのパーツが実用品から消耗品へと推移した
10年の軌跡が感じられます。


 

 実働テストでの不具合

 さて型落ちの、それも自分が使ってきたパーツばかり集めて作ったマシンなので使い勝手も予想がつくというもの。
 それでも動かしてみると不具合は出てくる。
 というか、そんな生易しいものじゃなかった。

 最初に異変を感じたのは「スーパーπ」を使ってのベンチマーク中。
 定格(2200MHz)では動くもののオーバークロックした状態(2420MHz)ではなぜかフリーズ。以前はこんなことはなかった。
 メモリをシングルチャネルからデュアルチャネルにしたので、高速化した分不安定になったのだろうか?

 その後、FFベンチ実行中にさらに異変が発生した。
 グラボがRADEON9200なのでスコアは悲惨だが、ベンチマーク自体は正常に動いてる。問題は異音だ。
 ベンチマーク途中からCPUクーラーが盛大な爆音をあげ始める。CPUに負荷をかけるのがベンチマークの目的だから熱も出るだろう。しかしこの騒音はひどすぎる。そう思いなにげなくケースの上面を触ったら、とてつもなく熱い!
 慌ててケース側面を開けた。もしやと思って電源に触れると、とてもじゃないが触れないほどの熱さ!
 こいつか、犯人は!

 電源の耐えられない熱さ

 ベンチマークを止めて電源を落とし、側面を扇風機で冷やした。そのくらいシャレにならない熱さだった。
 この電源、3000円で買ったのだが見事に期待を裏切られた。

 ダメ電源の兆候はそれ以前からあった。
 マザボ付属のソフトで電圧を監視していたのだが、スーパーπ実行時のコア電圧の落ち込みがひどい。無負荷時に1.4Vなのが負荷をかけると1.35Vを切る。しかも安定せず電圧値が揺れている。もっとひどいのがメモリに供給されているだろう3.3Vで、メモリに負荷をかけると3.4V弱から2.8V台まで落ち込む。スーパーπが落ちたのはこれが原因だろう。
 安物電源ばかり使ってるので電圧降下は見慣れているが、こんなにひどいのは初めてだ。
 それでも定格では動くから文句は言わないつもりだった。3000円の電源に多くを望んではいけない。

 しかし熱問題は別だ。廃熱は電源本体だけでなく周囲のパーツの寿命をも確実に縮める。排熱が追いつかずCPUクーラーがうなり出したのが何よりの証、電源の熱がCPUの温度まで上げてしまってる。
 一番腹がたつのはそんな末期的状態なのに、電源ファンは無頓着にも止まりそうなスピードで申し訳程度に回ってるだけなのだ。電源とケース内の熱を微塵も放出できてない。
 この電源の売り文句は「驚きの静音性」なのだが、熱を放置したマイペースな静音性は確かに驚きだ。おまえが静かにしているせいでCPUクーラーが悲鳴をあげている。それでおまえは満足なのか?
 確かに動いてる。故障ではない。しかし言わせてくれ。

これなら初期不良のほうがよほどマシだ


 もうひとつ言わせてほしい。間違いなく

この電源を作った奴は この電源を使っていない


 こんなもん使ってたら数年のうちに、いやほぼ確実に夏を迎えるたびに周辺のパーツが壊れていく。マザボとHDDが特にヤバい。
 専門家ならわかるはずだ。こんな欠陥品を売ってはいけない。メーカーに良心がないならショップが防波堤になるべきだ。
 電源に個体差があるのは承知しているが、こんな個体が出回ってる時点でアウトだ。いくら安くてもダメだ。これは製品とは呼べない。
 万一買ってしまった人間は、悪いこといわないから捨てろ。
 これのせいでそのほかの、何倍も値打ちのあるパーツが無駄に壊れていくよりよほどマシだ。

 老体に鞭打って

 こんなもの買ってしまった自分が悪いのだが、ではこのマシンの電源をどうしよう。これ以上の出費はしたくない。
 このダメ電源の中を開け(保証はなくなるが)ファンを交換してその制御をマザボに任せれば、とりあえず熱の問題は緩和できるだろう。
 しかし熱以外の点でもこの電源はもはや全く信用できない。使いたくない。
 結局、前についていた電源に戻すことにした。

 この古い電源はAthlon64に未対応なのでピンの規格が古いし、大事な12Vは最大12Aしか絞り出せない。
 けれど旧規格の20PINの電源ケーブルは、現在の24PINにそのまま差しても実は動く(差す位置に注意が必要だが)。
 ATX12Vと呼ばれるCPU近くの4PINは、変換ケーブル(田コネ)を使って供給すればいい。
 肝心の12Vの供給量も、余計なパーツを積まなければ12Aでこと足りる。

 そう、古い電源でもAthlon64は動くのだ。今まで何度か試したが12Vを10A以上供給できる電源ならどれもうまくいった。
 余計なHDDや光学ドライブなどを積まないようにして12Vの電力消費を抑えれば、結構うまくいくものだ。
 決してお勧めできるセッティングではないし耐久性に不安は残るが、それでもあのヘッポコ電源を使うよりはマシだ。それは間違いない。

 というわけで電源を再度載せ換えた。全部のパーツを載せてから電源だけ交換するのは正直骨がおれたけど。

 電源交換後のベンチマークではオーバークロック状態でのスーパーπも完走。FFベンチも完走。CPUクーラーも静かになった。
 (コア電圧は アイドル時 1.39V / 負荷時 1.35V。 3.3Vラインは常に3.3V)

 それにしても、なんだったんだ、あの電源は。

背信のパーツども

 その後は順調にセットアップが進んだが、試しにDVDを焼いてみた時に問題が発生した。
 提供するHDDに残っていたデータ(主にエロ)をバックアップ(するのか)しようとしたときのことだ。
 確かにバックアップは成功した… ようにみえた。しかしいざバックアップDVDを読み込もうとして、それができない。うまく焼けていない。
 使用したメディアはRITEK。海外メディアながら今まで何の不具合もなく使えていたのに。
 (改めて日本製メディアで焼くと大丈夫だった)

 ここ数年はDVDドライブはPIONEER製を買っていて信頼していたのだが、よく見ると今回買ってきたものは同じPIONEERでもMADE in China。
 いくら中国と台湾が仲悪いからってメディアまで差別してほしくないのだが。
 悪いが友人には海外製メディアを使うなというしかない。結局今回のマシンを作るにあたり使った新規パーツは電源もドライブもハズレだった。
 「安物には手を出すな」というありきたりの教訓を残して。

 ただし500円で買ったメモリは、手持ちのメモリとの組み合わせできちんとデュアルチャネルで動いてる。ありがとう。

最後に、主要諸元

CPU Athlon64 3700+ 定格:2200MHz 常用:2310MHz
M/B ASUS A8V-MX
メモリ 256MB * 2 PC2700とPC3200を混載
PC2700でデュアルチャネル動作
HDD IDE 160GB
VGA RADEON9200 AGP
ドライブ PIONEER DVR-115
電源 300W
サウンド (オンボード)
LAN (オンボード)


 新天地でもせいぜい可愛がってもらえよ。






補足:最近の電源に思うこと


 久しぶりに電源を新規購入してえらい目にあったわけだが、もちろんこんな電源ばかりじゃないと思う。
 私の現在のメインマシンの電源(Antec EarthWatts 380)は非常に気に入っていて文句のつけどころがない。
 ただ全体として、まともに使える電源の値段の下限が、昔と今ではだいぶ違っていると思う。

 以前は秋葉原に行くと125Wくらいの電源がそれこそ2000円くらいで売られていて、そんなのでも不具合なく動いていた。電圧のブレはあったしそこそこ発熱はあるし電源効率も悪かっただろうけど、品質にこだわらなければ普通に使えた。だが今の安物電源は使えない
 なんでこんなことになったのか。それはやはり無理に出力を上げようとしているからだと思う。
 エンジンと同じで電源も出力が大きいほど物量を投入しないといけないしそれなりに頑丈でないといけない。出力が大きいほど発熱も増える。
 本当に400W、500Wもの出力が必要なのか? 大多数の人には必要ないと私は思う。CPU、メモリ、マザボ、HDDといった主要パーツはここ数年で相当消費電力が減った。電気をバカ食いするのは一部のクアッドコアCPUやハイエンドのグラボなど上級者向けのパーツだけだ。そういう人だけが大容量電源を買えばよい。
 HDDもドライブも1つずつ、グラボはオンボードというライトユーザーなら250Wもあれば余裕だと思う。
 雑誌のPC製作記事などではよく「大容量の電源のほうが安定」などと書かれているが本当だろうか。大きすぎるマージンは初期投資の点でも消費電力の点でも無駄ではないか。電源の出力など必要量を満たしていればよい。

 大事なのは量ではなく質だ。
 大出力のために電源の質が落ちるくらいなら、出力を抑えて質のいい電源を作ってほしいのだ。

 この願いを一般の人に理解してもらうにはまだ数年かかるだろう。普通の人はわざわざ電源を単体では買わないし、自作初心者は出力の大きさで電源を選びがちだ。安物電源の寿命は数年だからそういうパーツを買ってしまった人が痛い目をするのも数年後。しかも電源によるトラブルはマザボやHDDの故障となって現れるので犯人が特定されにくい。

 それでも私の願いはかなってほしいものだ。そして願いがかなうまでは、せめて「80PLUS」ロゴのついた効率のいい電源を選ぶとしよう。


DIYメニューへ   

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送