地獄に仏編
いくら周波数特性がデタラメでも位相がグチャグチャでも、スピーカーから音は出ます。
毎日そのグチャグチャの音を我慢して聞いています。
聞いてはいますがそのイヤな音が気になって他のことが手につきません。聞いてる時はおろか、布団に入ってからもどうすればまともな音になるのか、頭の中はそればっかりです。
こんなに不健全なことはありません。早くこの無間地獄から抜け出してオーディオ機器のことなんか忘れて音楽を楽しみたい。こんなことに時間を使うなんて全く無駄です。一刻も早く、最短ルートでこの地獄を抜け出すのだ。
この時点で、コンデンサやコイルを使ったネットワークでは解決は無理だ、と確信していました。
ならば他の道を選ぶしかありません。道は2つ。
ネットワークに代えてチャンネルデバイダを使う道。そして2ウェイをあきらめ、フルレンジで我慢する道です。
クラシックが聴きたい私には、フルレンジで我慢するつもりはありません。よって残された道はただひとつ。
チャンネルデバイダ(略してチャンデバ)はコンデンサやコイルといった「受動素子」の代わりにトランジスタやOPアンプといった「能動素子」を使って周波数特性をいじる装置です(能動素子、とは平たく言えば「電力を消費する素子」です)。ともかくチャンデバを使いこなせれば2ウェイ以上のスピーカーをうまくつなげられるらしい。
今までこれを敬遠してきたのは
・高い
・安物は音が悪い(らしい)
・大げさ
・電力を消費する
といったところでしょうか。私の予算では高級なチャンデバなんて買えませんし、そもそもどれが高級でなにが安物なのかさえわかりません。要するに食わず嫌いなのですが。
しかしそんなこともいってられません。チャンデバしか解決の方法がないのなら。
とりあえず、チャンデバがどんなものなのか試しに使ってみるのが一番です。できるだけ手軽に、安く、できればタダで(笑)。
そこまで考えて、あるPCのソフトを思い出しました。
「Frieve Audio」
PCをオーディオ化するのに熱心だった一時期、いろんな試みをしてました。USBオーディオを繋げたり、ASIOドライバ「ASIO4ALL」を導入したり。「Frieve
Audio」というソフトを知ったのはその頃です。要はメディアプレーヤーのようなPC上のプレーヤーなのですが、とにかく音質がいいのです。
高音質の理由は「MP3でカットされてる高音を補完」したり「アップサンプリング」を行ったりといろいろありますが、一言でいうと「CPUの能力を最大限に使う」という点に尽きます。使ってみると本当にCPUパワーをごっそり持っていかれます。こんなにCPUが頑張ってるならいい音が出るのも当然、と素人も納得。「ビリーズ・ブートキャンプ」を見て「これならやせて当たり前」と思わせるのと同じくらいの説得力があります。
実際に「Frieve Audio」を使ってる人の評判は高く、もうCDは要らないという人もいるほど。
個人的には「USBオーディオ」&「ASIO4ALL」&「Frieve
Audio」という我が家では最強の組み合わせでも、CDプレーヤーに太刀打ちできるかは微妙だと思います。USBオーディオに追加投資すれば追い越せるかもしれませんが、CDプレーヤーを買い換えたほうがいい結果になるかもしれません。現状では音質では半歩及ばず、使い勝手も考えるとやはり通常のCDプレーヤー、というところに落ち着きます。
というわけで常用こそしてませんが「Frieve
Audio」は高く評価してます。専用のCDプレーヤーと比較できる性能なのですから。
でも今回私が注目してるのは通常のフリーソフト版の方ではなく、上位版のシェアウェア「Frieve
Audio M-Class」です。
「M-Class」は「Frieve Audio」に加えていくつかの追加機能を持っています。その中で注目すべきは、
・音響特性を測定し、周波数特性等を自動補正する
・チャンネルデバイダとして使える
最初にこのソフトの説明を読んだ時は何も感じませんでした。
「ふーん、なんかすごいね。でもオレには関係ないや」
記憶の淵にかろうじてひっかかってた「チャンネルデバイダ」という単語。今となっては魂を揺さぶられるキーワードです。
関係ない、どころじゃない。
私に今必要なのはこの機能だ、このソフトだ! 俺はお前を欲してる!!
やってみました
さあ、やるぞ! だがその前に。
PCをチャンデバ化するには、最低でも4チャンネル出力ができるPCオーディオ機器が必要です。
うちのUSBオーディオは2チャンネルのみで使えないし、オンボードサウンドなど最初から使う気はありません。
しかしなぜか今使ってるマシンには「サウンドブラスターLive!
Value」が差さってます。もちろん差したのは私なのですが、なんでこんな古いカードをいまさら再使用してるのか? 理由は失念しましたがこいつは4チャンネル使えます。とりあえずの実験に不足はありません。
あと必要なのはPCとアンプをつなぐ2系統分の出力ケーブル。これが手元にありません。週末に家電屋に行くまで実験はおあずけかと思いましたが、念のため家捜ししたら出てきました。
これですべてが揃いました。かかった費用は今のところ0円です。
さあ、やってみました。
簡単です。ダウンロードしてインストールして設定するだけです。
(設定のやり方は、私が下手に説明するよりヘルプ見たほうが確実ですから割愛)
ネットワーク構築時のように汗だくになることも半裸になる必要もありません。なによりハンダごてを握る必要がないのが嬉しいです。
まずは音響特性を測定。マイクが必要ですが、それならずっとPCに差しっぱなしです。マイクったって大昔のFMVデスクパワーのオマケですが、とりあえず。
で、自動補正をかけてチャンネルデバイダを通して鳴らしてみました。
チャンデバ初体験の瞬間です。
出てきた音を聴いた瞬間、思いました。
自分は今までとんでもない回り道をしてきたのだと。
そしてこの瞬間、私の部屋のメインオーディオはPCに決まりました満場一致で。
実際にこれを書いてるのは一週間後のことなので当時の新鮮な感動を再現できないのが残念ですが、鳥肌ものでした。
ただ「Frieve Audio」はCDを再生できないので手持ちの乏しいwavファイルを試聴するしかなかったのですが、それがよりによって「宇宙刑事シャイダー」の「不思議ソング」だったのが無念です。
♪ふっしぎしっぎっ まっかふしっぎっ る〜わ〜っ
「おおっ、なんて素晴らしい音なんだ!」
…なんかマヌケです。ていうかこんな曲聴いて感動してる自分がフーマの手先みたいでイヤです。
口直しに「アニーにおまかせ」で耳も心もリフレッシュしたのは言うまでもありません。
新たな旅の始まり
これでうちのオーディオは完璧になったのでしょうか?
いいえ。
むしろうちのオーディオは問題点だらけだ、というのがよくわかりました(以下の表に列挙)。
問題 | 原因 | 対策 |
低音が下品 | この下品な低音はサウンドカード「SB Live!」ならではの聞き覚えある音だ。懐かしささえ感じてしまった。 | 応急処置としてカード上の出力カップリングコンをタンタルに交換した。 元々「高機能だが低音質」と言われるカードなので、買い換えが吉かも。 |
高音のノイズ | マザーボードのコンデンサ(?)が鳴いている。 「Frieve Audio」のせいで安物マザーに常時高負荷がかかっているため。 |
マザーボードの部品交換が必要。いずれはPC買い換えか? 「Frieve Audio」の機能と高いCPU負荷を考えると選択肢はデュアルコア以外ない。しかし高級CDPを買うと思えば安いもの。 |
聴ける曲が限られる | ・CDをダイレクトに聴けない ・HDDに保存するにも容量不足 |
とにかく手持ちのCDをリッピングしまくる。 容量が足りないのでアニソン等はMP3化で誤魔化す。 (愛聴版や、子門真人のように可聴域を超える歌唱力の持ち主はwav保存を許可) 将来的にはHDD増設、というかPC新造。 |
中高音のかすれ | トゥィーター担当のTU-870の低域再生力不足 | 魔改造により各部のコンデンサ容量が小さすぎるので、いずれ修復。 |
まだ音のピントが合ってない印象 | ・自動補正時に使うマイクが安物 ・ウーファーのスピーカーケーブル太すぎ? |
・いいのを買う。または借りる ・細めのケーブルに買い換える? |
響きが乏しい | 部屋の音響が悪い(デッド) | まずは部屋の片づけから。 将来的には音響ボードなども導入? それとも、それもソフトで補正かける? |
「Frieve Audio」のHSCが使えない | カットされた高音を仮想的に再生する機能 これをONにするとCPUが過負荷 |
現PC(モバアスXP-M2200+)では荷が重い。 予備機(Athlon64 3700+)では常用可。それでも負荷は70%以上。 デュアルコア機に買い換えが賢明。 |
音切れ/音飛び/プチノイズ | ・高負荷のためネットブラウザ程度の負荷でも音が切れる ・ASIOドライバのバッファ不足 |
・フリーソフトを使って「Frieve Audio」の優先度を上げる ・ASIOのバッファを無闇に減らさない(デフォルト値で問題なし) 予備機(より高性能)でも音飛びは変わらず。上記対策必須 |
ネットワーク付いたまま | 音質に影響… あるだろうなやっぱ 「Frieve Audio」以外のソフト使用時に問題がでてくるので安易に外せない |
別のサウンドカード(USBも可)を使い、そちらを標準のサウンド機器に設定してメインのアンプは「Frieve
Audio」のみで使用という手もある。 しかしトゥィーター保護の点でTU-870につけたコンデンサは外しづらい |
これほど問題点を抱えているにも関わらず、もうCDプレーヤーで音楽を聴くことはないでしょう。ほとんどすべての点でチャンデバを通した音の方が上です。近いうちに私はCDプレーヤーのコンセントを引っこ抜くことでしょう。というか今引っこ抜きました。
いままで「なんとなく音が悪い」と思っていたのが、今は原因がアンプのせいなのか、サウンドカードのせいなのか、そういう事が前よりはっきりわかるように思えます。とても不思議なことですが。
たぶん基本的なセッティングができてきたので、そういう各部のアラが見えてきたのだと思ってます。コンデンサやスピーカーケーブルを交換するより先にやらなきゃいけないことがあったのだと、ようやく実感できました。
と同時に、こうしたセッティングは素人には至難、というより不可能だとも思いました。周波数特性を合わせるのがやっとこさで、位相やディレイに至っては論外です。たとえ高価な計測器を持ってたとしても無理でしょう。結局素人が手さぐりでセッティングできるのはフルレンジがやっとこさという気がします。
ここまでなんとかたどり着けたのはひとえに「Frieve
Audio M-Class」のおかげです。
仮に他のチャンデバを買ってきたとしても、ここまでうまくは鳴らせません。仮にこれと同じ性能の物を手に入れたとしても(おそらく10万円は下らないでしょうが)、私にそれを正しくセッティングする腕前がありません。
「M-Class」の最大の魅力は「周波数特性等を自動補正」できることだと思います。チャンデバがどんなものかすらよく分かっていない私のような人間でもこうしてまともな音に近づけるのですから。
なんというか、ようやく出発点に立てたという気分です。
いつでも迷った時はここに戻ってくればいい、そんな安心感の得られる場所に今立っている気がします。
そして、これからやらなきゃいけない事が山のように見えてきました。これらが解決した暁には素晴らしい世界が待っているでしょう(たぶん)。
とはいえこれからはのんびりとやっていくつもりです。もう焦る必要などないのですから。
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