声をきかせて編

 クルマ、パソコン、あるいはオーディオにせよ、だ。
 男にとってメカとは惚れた女に似ている。
 わがままだ。言うことをきかない。そこが可愛い。
「私はご主人様の従順なしもべです。はうっ」
 なんてのが可愛いと言い張るのは、なーんもわかっちゃいないガキんちょの幻想である。
 なんでパソコンのような実用一点張りのはずの機械が「趣味」たりえるのか。
「オレ洗濯機がシュミなんだ」「いやオレはエアコンが」「やっぱ冷蔵庫だよな」などという人が皆無に等しいのに、同じ家電のはしくれのはずのパソコンがシュミたりえるのは「言うことをきかない」からだ。この一点に尽きる。
 私はいまだ自分の思いどおりに動くパソコンに出会ったことがない。一度たりともだ。現に今こうしてキーボードを叩くこのマシンは電源投入後5分程度おかないとネットに接続できず、それさえ二度に一度は失敗するありさまだ。
「いやそんなことはない、うちのパソコンはなんでも言うことを聞く」という人がもしいればそれはよほどの初心者か、さもなくばよほどの幸運にめぐり合えた人だろう。いや幸運などではない。私に言わせればそれは不幸だ。パソコンの可愛さいとおしさに巡り逢うことなく人生を終えるなんて。
 思い通りにならない。これ以上の悦楽が人生にあるだろうか。

 ここまでくどくど言い訳をかいたくらいだから、当然うちのオーディオは思い通りの音が出ているわけがない。
 自慢じゃないがさっぱりだ。
 現状をありのままに述べるならば、低音が出すぎだ。こんな感じだ。。


ズズズン、ズシン、ドカン、バコスカボカボコッ!

 半年前このスピーカーをジャンク屋で拾ってきた時、こいつは実に腰砕けのよれよれサウンドを披露してくれた。
 その時思った。「よし、こいつにズシンでカツンな音を出させてやろう」
 人の思いの力はすごい。
 オーディオの右も左もわからず実技においてもイモハンダ大王な自分が試行錯誤の末、遂にそれを実現させてしまった。乾電池4本のアンプでここまでできたのは自画自賛できる。

 だが夢が叶ったはずのこの音、実際に聴いてみると自分の好みと違う。いや、おそらく誰の好みにも合わない。
 音量も豊か、音の解像度も高い。音の立ち上がりも早い。けれども…
 こいつには致命的な欠陥があった。迫力の低域とクリアな高域にはさまれた中域があまりに弱い。要するに


 ボーカルがさっぱり聞こえない!


 泣く泣く、今のボリュームたっぷりの低音を手放すことにした。
 といって元通りにするつもりはない。バイアンプ化にしてもBTL化にしてももともと「いい音」を出すための工夫であって「低音を出す」ためではない。低音強化のためにした事といえばスピーカーケーブルを太いのに替えたくらいだ。
 だから基本設定はこのままに、なんとかボーカルが前に出る工夫を試みた。


・低音側のアンプに入力カップリングコンデンサを挿入した。
 入力カップリングコンがついてなかったアンプ(直結!)に今さらながらコンデンサを挿れ、低域をカットした。
 コンデンサはたまたま秋葉原で安く売ってた銀タンタル(1uF)。
 音質の悪化を覚悟したが、特に悪影響なし。但し低域の減少も聴感上はほとんどわからず。

・低音側のアンプの高域カット周波数を上に延ばした。
 バイアンプなのでアンプ側で高域をカットしている。その定数を変え、少し上までひっぱるようにした。
 オシロ上では効果があるのだが、聴感上、効果なし。

・ツィーターのコンデンサをとっぱらった
 アンプ側で低域をカットしてるんだが、安全のため残しておいたネットワーク用コンデンサを外した。
 中域が出るようになった。ものすごく汚らしい音で。大失敗。即、元通りにする。失敗の原因は不明。

・ツィーターに並列でコイルを入れる
 コンデンサとコイルを併用することで低域のカットの具合が急峻になる。
 これはなかなかいい具合。ウーハーとツィーターの音が混じり合ってたのが解消されたのか?
 但しピーク時にノイズが出る。コイルの容量が大きすぎると判明、小容量のものに変えて改善。
(ほんとはちゃんと計算式とかあるんだけど、うちはありあわせの部品でやってますので)


 いろいろやってみたのだけど根本的にはすべて失敗

 中域が足りないならウーハーを高域までひっぱる、もしくはツィーターを低域までひっぱればいい。そう思ってやってみたのだが… ツィーターのコンデンサの容量を増やしたりもした(安物のフィルムコン使ったり、OSコンを背中合わせにしたり)。これで低域まで伸びるはずなので理屈ではあっている。が、出てきた音には失望した。音量としては鳴っていても実につまらない音。残響がないのだ。
 「響き」の重要性を実感した。そして音量より音質の方が大事なことも。


 やはり大事な部分に金を惜しんではいけないのだろうか。といって高級コンデンサ買う金もなし。
 金はないけどヒマはあるので、駄目もとでスピーカーの配置換えをしてみた。
 6畳間を横長に使ってたのを縦長に変えてみたのだ。


 え、うそ!?

 ボーカルが嘘のようにスルッと前に出てきた。今までの苦労はなんだったの?
 試しにオシロで周波数特性を計ってみたら、上から下まで一直線。フルフラット!!

 あの暴力的な低音がどこかへ行ってしまったのが少し残念だが… でもレイアウトの重要性を思い知った。
 ただ、スピーカー(&人間)だけ配置換えしたせいで、パソコン使うときディスプレイを斜めに見るはめになったり、テレビを見るとき音が見当違いのとこから飛んできたりする。大変だ。
 マニアに安息の時はない。


DIYメニューへ

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送